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2026年8月29日 18:12:04
制度・基礎知識
特定技能外国人が失踪したらペナルティはある?企業の届出・初動対応と防止策

特定技能外国人が突然出勤しなくなり、連絡も取れない場合、企業は安否確認と事実関係の把握を急ぐ必要があります。ただし、欠勤しただけで「失踪」と決めつけたり、本人の意思を確認せず退職扱いにしたりするのは適切ではありません。
出入国在留管理庁では、企業が所在を確認できなくなった状態を主に「行方不明」と表現しています。行方不明者が発生しても、企業へ直ちにペナルティが科されるわけではありませんが、届出を怠った場合や、賃金未払い・支援不足などが原因だった場合は、指導や処分につながる可能性があります。
本記事では、特定技能外国人が失踪した場合の企業側・本人側のリスク、必要な届出、初動対応と失踪防止策を解説します。
特定技能外国人が失踪しても直ちにペナルティが科されるとは限らない
連絡が取れないだけでは失踪と断定できない
無断欠勤の理由は、病気や事故、携帯電話の故障、家族の事情などさまざまです。連絡が取れないからといって、すぐに失踪や退職と断定してはいけません。
まずは電話、メール、SNSなど複数の方法で連絡し、連絡した日時と結果を記録します。寮や住居を確認するときも、本人のプライバシーや住居への立ち入りに配慮が必要です。
失踪者が発生しただけで企業が処分されるわけではない
特定技能外国人が1人行方不明になったという事実だけで、受入れ企業が自動的に処分されるわけではありません。外国人が自己判断で職場を離れ、企業が適切な労務管理や支援、届出を行っていたケースもあるためです。
一方、所在確認や必要な届出を放置すると、企業側の管理体制を疑われる可能性があります。
失踪の原因や企業による対応を踏まえて判断される
企業への影響を判断する際は、行方不明になった経緯や原因、賃金の支払い状況、相談対応、支援の実施状況などが確認されます。
たとえば、賃金未払いや暴言、相談の放置など、企業の責任によって外国人が行方不明になったと認められる場合は、受入れ機関としての適格性に影響します。出入国在留管理庁のQ&Aでも、賃金不払いや相談対応の不備が行方不明の原因となったケースが示されています。
正式な退職・転職と無断での失踪は異なる
特定技能外国人には、勤務先を退職・転職する自由があります。退職の意思を伝え、必要な在留手続きを行っているのであれば、失踪ではありません。
無断で職場を離れ、企業や支援担当者が所在を確認できない状態とは分けて扱う必要があります。退職の申し出があった場合は、本人の意思と退職日を確認し、通常の離職手続きを進めます。
特定技能外国人の失踪で企業が受ける可能性のあるペナルティ
必要な届出を怠ると指導や罰則の対象になる可能性がある
特定技能外国人が行方不明となり、受入れの継続が困難になった場合、企業は「受入れ困難に係る届出」を行わなければなりません。
届出義務を履行しない場合は、入管から説明や是正を求められるほか、入管法上の罰則や、今後の受入れ審査への影響が生じる可能性があります。期限を過ぎたことに気づいた場合も、そのまま放置せず、管轄の地方出入国在留管理局へ相談しましょう。
虚偽の届出をすると処分を受けるおそれがある
行方不明になった日や原因、企業の対応について、事実と異なる内容を届け出てはいけません。賃金未払いなどを隠すために虚偽の説明をした場合、単なる記載ミスよりも重大な問題として扱われます。
不明な項目は推測で埋めず、「確認中」「現時点では不明」としたうえで、判明した事実を時系列で記載します。
労働関係法令違反があると特定技能外国人を受け入れられなくなる
受入れ企業には、労働法令や社会保険関係法令などを守ることが求められます。重大な法令違反や欠格事由への該当が確認されると、新規受入れや在留期間更新が認められなくなる可能性があります。
報酬や労働時間も日本人と同等以上であることなどが求められます。詳しい受入れ基準は、出入国在留管理庁の「雇用における注意点」で確認できます。
支援義務を果たしていない場合は受入れ要件を満たさなくなる
特定技能1号では、生活オリエンテーション、相談対応、日本語学習の機会提供、定期面談などの支援が必要です。
支援計画を作成しただけで実施していなかった場合、受入れ基準への不適合や支援計画の実施困難に関する届出が必要になることがあります。登録支援機関へ委託している場合も、企業は実施状況を把握しておかなければなりません。
不法就労に関与すると不法就労助長罪に問われる可能性がある
行方不明になった外国人が別の場所で不法就労しても、元の勤務先が直ちに責任を負うわけではありません。
ただし、企業が許可範囲外の仕事を紹介したり、名義貸しをしたりするなど、不法就労に関与すれば、不法就労助長罪に問われる可能性があります。本人の在留カードやパスポートを取り上げて移動を制限することも認められません。
採用費用の損失や職場への影響も発生する
法的な処分がなくても、紹介料、渡航費、教育費、住居の初期費用などを回収できないことがあります。急な欠員によって、残った従業員の負担が増える点も見過ごせません。
同じ国籍の社員が不安を感じることもあるため、事実を必要な範囲で共有し、憶測や責任追及が広がらないよう配慮します。
失踪した特定技能外国人本人に生じるペナルティとリスク
適切な手続きを経た転職であればペナルティはない
特定技能外国人は、要件を満たす別の企業へ転職できます。前の勤務先から許可を得なければ転職できない制度ではありません。
ただし、新しい企業との雇用契約だけで働き始めることはできず、在留資格変更許可などの手続きが必要です。転職の意思を伝えずに職場を離れるより、企業や登録支援機関、入管へ相談するほうが安全です。
正当な理由なく特定技能の活動を行わないと在留資格取消しの対象になり得る
正当な理由なく、特定技能に該当する活動を継続して3か月以上行っていない場合は、在留資格取消しの対象となる可能性があります。
会社都合の解雇後に継続して就職活動をしているなど、正当な理由が認められる場合もあります。ただし、退職後も在留期限まで自由に滞在できると一律に考えるのは危険です。
許可された範囲外で働くと資格外活動になる可能性がある
特定技能では、許可を受けた分野や業務区分の範囲内で働きます。行方不明になった後、在留手続きをせずに別の分野や企業で働くと、資格外活動や不法就労に当たる可能性があります。
高い賃金を提示されても、在留資格上働ける仕事か確認しなければなりません。
在留期限を過ぎると不法残留になる
勤務先を離れても、在留カードに 記載された在留期限は変わりません。在留期間の更新や資格変更を行わずに期限を過ぎれば、不法残留になります。
企業と連絡を絶ったことで更新時期を見落とすケースも考えられるため、本人には在留期限を定期的に確認するよう伝えておきます。
不法残留や不法就労により退去強制・上陸拒否の対象になることがある
不法残留者は退去強制手続きの対象となり、強制送還後は一定期間、日本へ入国できなくなることがあります。出国命令制度を利用できる場合もありますが、適用には条件があります。出国命令制度の案内もご確認ください。
特定技能外国人が失踪 した場合に企業が行う初動対応
本人へ連絡して出勤状況と安否を確認する
無断欠勤が判明したら、本人の電話、メール、SNSなどへ連絡します。「なぜ来ないのか」と責めるのではなく、まず安全かどうかを確認してください。
連絡日時、使用した手段、呼び出しの結果、送信した内容を記録しておくと、その後の届出にも役立ちます。
登録支援機関や紹介会社と情報を共有する
支援を委託している場合は、登録支援機関へすぐに連絡します。本人から相談を受けていなかったか、最近の面談で変化がなかったかを確認しましょう。
紹介会社にも連絡できますが、届出や個人情報の取扱いは、契約内容と法令に沿って行います。
緊急連絡先や同僚から状況を確認する
本人が届け出ている緊急連絡先や、親しい同僚に連絡し、最近の様子を確認します。ただし、事情を必要以上に広めたり、根拠のない情報を母国の家族へ伝えたりしないよう注意が必要です。
事件や事故のおそれがある場合は警察へ相談する
自宅に所持品が残されたまま、体調不良を訴えていた、事件に巻き込まれた可能性があるなど、安否が心配される場合、7日間連絡が取れなくなってから警察へ相談します(失踪は7日間連絡が取れなくなってからしか、警察は受理してくれません)。
警察への行方不明者届が必要かどうかは、状況や届出人との関係によって異なります。緊急性が高い場合は110番、それ以外は最寄りの警察署に相談しましょう。
事由発生日から14日以内に受入れ困難に係る届出を行う
行方不明により受入れが困難になった場合、企業は事由が発生した日から14日以内に、管轄の地方出入国在留管理局へ届け出ます。
現在は「受入れ困難に係る届出書」に加え、「行方不明が判明した際の状況説明書」などを提出します。対象者、必要書類、提出方法は出入国在留管理庁の手続案内で確認できます。
雇用契約を終了した場合は契約終了の届出を行う
受入れ困難の届出を提出した時点で雇用契約が続いている場合は、契約終了後に別途「特定技能雇用契約の終了に係る届出」が必要です。
無断欠勤を即日で自己都合退職として扱うのではなく、就業規則や労働法令に沿って終了日を決めます。特定技能雇用契約に係る届出も確認しておきましょう。
給与・社会保険・税金などの退職手続きを進める
雇用契約が終了したら、未払い賃金の精算、社会保険・雇用保険の資格喪失、源泉徴収票の交付などを進めます。会社の判断で給与や私物を没収することはできません。
外国人の離職時には、原則としてハローワークへの外国人雇用状況の届 出も必要です。厚生労働省の案内に沿って対応します。
特定技能外国人が失踪する主な原因
求人時の説明と実際の給与・仕事内容が異なる
求人票では高い給与が示されていたのに、入社後の手取り額が想定より少ない、聞いていない作業を任されたといった食い違いは不信感を招きます。特に寮費や光熱費などの控除は、事前説明が欠かせません。
長時間労働や賃金の未払いがある
恒常的な長時間労働、残業代の未払い、休日を取りにくい環境が続けば、相談せずに職場を離れる可能性が高まります。国籍にかかわらず、労働時間と賃金を適正に管理する必要があります。
ハラスメントや人間関係の問題を抱えている
上司からの暴言、同僚による差別、集団の前での叱責などが原因になることがあります。本人が笑顔で受け答えしていても、問題がないとは限りません。
来日前に多額の借金や紹介手数料を負担している
来日前に借金をして紹介手数料などを支払っていると、予定より手取りが少ないことへの焦りが強くなります。採用時には、本人が保証金や違約金、高額な費用を負担していないかも確認します。
日本語で相談できず職場や地域で孤立している
仕事の指示が理解できない、病院や行政窓口を利用できないといった悩みを抱えても、日本語で説明できず、相談を諦める人がいます。社内に話せる相手がいないと、問題が表面化しないまま深刻になります。
より高い賃金を提示する違法な仲介業者から勧誘される
「手続きなしですぐ働ける」「今より多く稼げる」などと勧誘され、別の職場へ移るケースも考えられます。違法就労の危険性と、適法な転職方法を本人が理解していることが重要です。
転職手続きがわからず無断で職場を離れてしまう
転職できないと思い込み、企業へ相談せずに離れる人もいます。退職の申し出をすると在留カードを取り上げられる、違約金を請求されると誤解している場合もあるため、入社時から 正しい手続きを説明しておきます。
特定技能外国人の失踪とペナルティを防ぐ対策
採用前に給与・控除・仕事内容を母国語で説明する
基本給だけでなく、残業代の計算方法、税金、社会保険料、寮費などを含め、手取り額の目安を説明します。母国語の資料や通訳を使い、本人が理解した内容を自分の言葉で話せるか確認しましょう。
雇用契約どおりの賃金と労働時間を守る
採用時の説明と実際の待遇を一致させることが、失踪防止の基本です。給与明細の内容を説明し、残業時間や控除額に疑問があればすぐ確認できる体制を整えます。
定期面談で仕事や生活上の悩みを確認する
特定技能1号では、外国人本人と監督者に対する定期面談が義務的支援に含まれます。形式的な質問だけで終わらせず、仕事、住居、健康、人間関係、家族への送金などを具体的に聞きます。義務的支援の内容もご確認ください。
母国語で相談できる窓口を整える
社内担当者に直接話しにくい場合に備え、登録支援機関や外部相談窓口も案内します。連絡先を渡すだけでなく、どのような相談に対応できるのかを説明することが有効です。
住居や行政手続きなどの生活支援を適切に行う
住居の確保、転入手続き、銀行口座、携帯電話、医療機関の利用など、来日直後には多くの支援が必要です。生活上の問題を放置すると、仕事にも影響が及びます。
転職を希望している場合は正しい手続きを案内する
転職の相談を受けたときに、脅したり引き止めたりすると、無断離職を招きかねません。退職方法、必要な入管手続き、新しい勤務先で働き始められる時期を案内します。
会社都合で契約を終了する場合は、特定技能1号の支援計画に基づく転職支援も必要です。
面談・支援・勤怠・給与の記録を保存する
面談記録、相談内容と対応結果、支援実施記録、出勤簿、賃金台帳、給与明細などを整理して保存します。行方不明者が出たときに、企業がどのような管理や支援をしていたかを説明する資料にもなります。
信頼できる登録支援機関と継続的に連携する
登録の有無だけでなく、対応言語、相談への返信速度、面談方法、緊急時の連絡体制を確認して選びます。定期報告を受け、外国人の様子や支援上の課題を企業側も把握しましょう。
特定技能外国人の採用前に|受け入れ適性診断で準備状況を確認
失踪や早期離職を防ぐには、採用後の対応だけでなく、受け入れ前の体制づくりが欠かせません。労働条件の説明方法や相談窓口、生活支援、登録支援機関との役割分担などが曖昧なまま採用すると、手続きの不備や支援漏れが起こり、現場の負担が増える可能性があります。
「特定技能人材の受け入れ適性診断」では、11項目の質問に答えるだけで、自社の準備状況を確認できます。採用前に見直すべき点や、受け入れ後に起こりやすい課題、注意したいリスクを整理できるため、初めて特定技能外国人を採用する企業にもおすすめです。
診断は約1分で完了し、回答後すぐに結果を確認できます。特定技能人材の採用を本格的に進める前に、まずは現在の受け入れ体制をチェックしてみてください。
特定技能外国人の失踪とペナルティに関するよくある質問
失踪者を1人出しただけで今後の受入れが停止される?
1人発生しただけで、一律に受入れが停止されるわけではありません。行方不明の原因が企業にあるか、届出や支援を適切に行っていたかなどを踏まえて判断されます。
失踪した外国人を企業が探し出す義務はある?
企業が独自に遠方まで捜索し、本人を連れ戻す義務が一律に課されているわけではありません。ただし、連絡や安否確認、関係者への確認を行い、判明した状況を届出に記載する必要があります。
警察への行方不明者届は必ず必要?
すべての無断欠勤について必ず提出するものではありません。事件、事故、自傷などのおそれがある場合や、本人の安全が強く懸念される場合は、速やかに警察へ相談してください。
届出は受入れ企業と登録支援機関のどちらが行う?
受入れ困難に係る届出の届出者は、特定技能所属機関である受入れ企業です。登録支援機関と情報共有しながら準備することはできますが、企業自身の届出義務がなくなるわけではありません。
登録支援機関へ委託していれば企業は責任を負わない?
支援を委託しても、雇用主としての労務管理や契約上の責任、特定技能所属機関としての届出義務は企業に残ります。委託後も、支援が計画どおり行われているかを確認しなければなりません。
失踪した外国人が別の会社へ転職することはできる?
在留期限を過ぎておらず、新しい勤務先や仕事内容が特定技能の要件を満たしていれば、転職できる可能性があります。ただし、必要な在留資格変更許可を受ける前に新しい会社で働くことはできません。不法残留や不法就労の状態にある場合は、別途対応が必要です。
特定技能外国人が失踪したら届出と原因確認を速やかに行おう
特定技能外国人が行方不明になっても、その事実だけで企業へペナルティが科されるわけではありません。重要なのは、安否確認と事実関係の把握を行い、受入れ困難に係る届出などを期限内に提出することです。
賃金未払い、長時間労働、ハラスメント、支援不足が原因となっていれば、企業の受入れ要件にも影響します。日頃から雇用条件を守り、母国語で相談できる環境を整え、面談や支援の記録を残しておきましょう。
行方不明が判明 したときは、登録支援機関と連携しながら、管轄の地方出入国在留管理局、必要に応じて警察や社会保険労務士、行政書士などへ相談してください。早い段階で適切に対応することが、本人の安全確保と企業のリスク軽減につながります。
